何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
憲法は、個人の権利や自由を保障するために国家権力を縛る法です。
そのため、憲法では様々な自由や権利を保障し、国家はそれを侵害し
てはならないことを規定しています。
そして、国家がそれを無視して国民の権利を侵害した場合、国民は裁
判所に訴えを起こして救済を求めることができます。そうしなければ
憲法で保障された権利や自由は全く意味がないものになってしまうか
らです。
このように、裁判を受ける権利とは、国民が国家による権利侵害を受
けた場合、司法による救済を求めることができる権利を意味します。
憲法32条によって保障される裁判を受ける権利は、憲法上の権利を
問題とする紛争解決に限らず、刑事、民事裁判にも及びます。
例えば刑事事件であれば、国家権力によって刑罰を科すためには、ま
ずは被告に対して、弁解の機会が与えられる必要があり、これを無視
して刑罰を科すことは許されません。
そうしないと政府は、自分たちの都合の悪い国民を簡単に処罰できて
しまうからです。
このように憲法32条は、国家が刑罰権を行使するためには、必ず行
政から独立した裁判所が、その適性を判定しなければならないことを
規定しており、国民はそのような司法による弁解の機会を与えられな
い限り処罰されません。
また民事事件においては、憲法32条は、国民が自分の権利を主張し
て法律上の救済を受ける機会が保証されることを意味します。
憲法は、このような法律上の権利を最終的に実現させ、紛争解決を図
るために、国民に対して民事裁判を起こす権利を保障しています。